カテゴリー: 建設のプロの豆知識

杭が支持層まで届かない?あなたならどうする?天使と悪魔の囁き

 

杭を打つために所定の深さまで掘ってみたら
支持層(建物を支える硬い地盤)に届いていなかった。

 

さあ、どうする?

 

冷静に質問されると、99%の建築の技術者が

「支持層が出るまで掘るべき」

と、答えるだろう。
当たり前のことである。

 

しかし

本当に、冒頭のトラブルの
当事者で、その瞬間に立ち会った時に
はたして、冷静な判断が出来るのだろうか?

 

例えば

あなたは、交通事故で人をひいてしまったら

「救急車を呼びますか?」
「逃げますか?」

と言われた時に、99%の大人は
「救急車を呼ぶ」
と答えるよね。

 

では

なぜ、ひき逃げや当て逃げが
後を絶たないのだろうか?

99%の大人が「救急車を呼ぶ」のであれば、
ひき逃げなんて年に数回しか
起こらないのでは無いのか?

 

実際は、
平成26年度版犯罪白書によると
平成25年度でひき逃げ事件が約10000件弱も起こっている。

ちょっと、それはそれでビックリな件数。

そんなにあるの? ひき逃げ事件。

 

つまり

人間、その当事者になった時に普段では当たり前な
冷静な判断がとれない
事が往々にしてあるということ。

 

その瞬間に、悪魔の囁きが耳元で聞こえてくる
ということ。

 

なぜなら

私も、過去に杭を打つために掘った時に、
所定の深さまで掘っても支持層まで届かなかった
ことを経験したことがあるから。

 

確か

その現場は、かなりの杭の本数があったのだが
支持層が1~2mくらい浅い所でず~っと出ていた。

 

だから

安心をしていた。
この現場では、支持層が出ないということは無いだろうと。

 

しかし

作業員さんから、
「支持層が抜けた」
(硬い地盤を掘っていくと、その先が柔らかい地盤だったという意味)

という報告を受けた時には、

一瞬だけど、いろいろ考えたね。

 

悪魔の囁き的には

・支持層まで届く杭を作りなおすなら 2~3週間かかる。
 そうなると、予定が大きく狂う。
 約束した期日まで建物を完成させるのが困難になる。

・杭を打つ機械を2~3週間、そのままおいておくと
 すごい金額がかかる。
 (大きな機械だと1日30万とか保証してほしい。ということもザラ)

などなど。

 

きっと、大きく悩むのは「時間」と「お金」かな。
その瞬間は、実際に体験してみると、とっても惜しいように感じられるよ。

 

しかし

天使の囁きの方が勝った。
(勝っていなかったら、こんな記事書いてないけど)

勝因は

「もし、バレたら建物作り直しくらい、
 シャレにならない事態になる」という危惧。危機感。

 

この結論は

私たち、現場監督の人間も、杭の担当者も、作業員さんも
意見は一致した。

 

だから

支持層まできっちり杭を入れよう。

ということで、杭を継ぎ足す方向に決断したね。
良かった。みんな天使の方が勝って。

その時は、「時間」も「お金」も余分にかかったけど
後からかかる、お金と時間に比べると小さなもの。

 

もしも

悪魔の方が勝っていたら、ゾッとするよ。

でも、建築現場での大きなトラブルって
結構、そんな判断の間違いで起こったりするから実は怖い。

 

1つの判断ミスが

何億円、何十億円の損害を産んだりする。
このスケール感が怖い。

と常日頃からヒシヒシと感じながら仕事してます。

 

ちなみに

この時の杭は、旭化成建材の杭だったけど
「担当者」も「作業員さん」も素晴らしかったよ。

 

更に

横浜のマンションの件の記事は4記事目。
あと3つ書いているので
良かったら合わせてお読み下さい。

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